ADVANCEコラム

令和2年分確定申告におけるICTの利用状況

自営業者や一定の副収入がある会社員等にとって、毎年の確定申告は欠かせない手続きです。近年はICT(情報通信技術)を活用した申告方法も浸透しつつあり、今後さらなる普及が見込まれます。昨年分の確定申告状況から、ICT利用の割合や傾向を確認しましょう。

 

  • 確定申告におけるICT利用は着実に増加

令和2年分の確定申告では、所得税等の確定申告書提出人員数が2,249万3,000人で、ここ数年ほぼ横ばいとなっています。国税庁では納税者がスムーズに申告できるサービス提供の一環で、自宅等からのICT利用による申告を推進しています。それによって申告会場への移動や対面の機会を減らすことは、感染症予防の観点からも重要です。

申告人数のデータとしては、国税庁のホームページ上での申告書作成やe-Taxなど、ICT利用による所得税等の確定申告書の提出を行った人は全体で1,726万4,000人にのぼり、令和元年分より134万9,000人増加しました。確定申告書を提出した人全体に占めるICT利用の割合も、76.8%に達しています。贈与税でも申告書を提出した48万5,000人のうち、81.8%がICT利用による申告を行いました。これらの割合は年々着実に増加しています。

 

  • 多様な申告方法の選択肢が求められる

確定申告においてICT利用を行った場所については、申告会場が344万6,000人(前年比9.6%減少)、自宅等が1,255万4,000人(前年比14.5%増加)でした。自宅等からの利用者は増加傾向で、その内訳は以下の通りです。

・国税庁ホームページ上で作成して書面で提出・・・465万5,000人

・国税庁ホームページ上で作成してe-Taxで提出・・・313万9,000人

・各種会計ソフトで作成してe-Taxで提出・・・476万人

 

e-Taxは確定申告の申告書等をインターネット上で提出できるシステムですが、その利用者は年々増加し、令和2年分では所得税等の確定申告書を提出した人のうち55.1%がe-Taxを利用しています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、自宅からスマホ等を使ってe-Taxで申告した人は101万8,000人(前年から約2.2倍)、そのうちマイナンバーカードを利用して申告を行った人は43万2,000人(前年から約7.3倍)と、大きな伸びを見せました。

新型コロナウイルス感染症の影響をうかがわせるもう一つのデータとして、閉庁日における申告相談等の減少も挙げられます。今年2月21日と2月28日に全国の税務署および合同会場・広域センターで実施された申告相談における相談件数は9万6,000件(前年比34.7%減)、申告書収受件数も13万3,000件(前年比42.6%減)と大幅に減少しました。

外出自粛がICT利用のきっかけとなり、確定申告の効率化が図れればポジティブな面もありますが、相談の機会が失われたことによる申告漏れといった懸念も残ります。ICTが普及していく一方で、納税者に多様な申告方法の選択肢が残ることも今後求められます。

 

参考:国税庁「令和2年分の所得税等、消費税および贈与税の確定申告状況等について」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/kakushin_jokyo/pdf/0021006-075.pdf

 

 

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