ADVANCEコラム

非正規雇用の待遇差が不合理とみなされる基準とは

中小企業でも今年4月から同一労働同一賃金が施行され、労働者の待遇差に関して以前より厳しい目が向けられています。とりわけ焦点となる非正規雇用者の待遇について、裁判となったケースから見てみましょう。

●最高裁で非正規雇用者への退職金が否認されたケース

ある大企業グループ子会社の元契約社員らが退職金をめぐり起こした裁判では、最高裁で退職金の支給が否認される結果となりました。不合理な格差を禁止する労働契約法旧20条をふまえ、二審の高裁では少なくとも正社員の4分の1は支給すべきと判断されていましたが、昨年10月の最高裁判決で「不合理な待遇格差とはいえない」と覆された形です。

同一労働同一賃金の運用に関する認識に、上記判決が与えた影響は少なくないでしょう。とはいえ裁判官の間では「有期契約労働者の雇用期間や職務内容等によっては、無期契約労働者との間に退職金支給の相違を設けることが不合理と認められることはあり得る」という趣旨の意見も出されました。したがって「いかなる場合でも非正規雇用に対する退職金は支払われない」ということではなく、個々の事情によっては判断が異なる可能性を頭に置く必要があります。

●待遇が不合理かどうかの判断基準

同一労働同一賃金における待遇が不合理かどうかを判断する基準として、以下のようなものが挙げられます。

1.業務内容・・・業務内容や役割における差異の有無および程度、業務量(残業時間)や休日労働、深夜労働の有意な差など

2.責任範囲・・・部下の人数や売上目標といった責任範囲における差異の有無および程度、人事考課の差異など

3.配置変更範囲・・・業務や職種変更、転勤、出向、昇格、降格、人材登用等における差異(実態を重視)など

4.その他の事情・・・正社員登用制度の有無および実績、労働組合やその他労使間での交渉状況、従業員への説明状況、労使慣行、経営状況、正社員登用等の処遇向上に通じる措置の実施状況や実績、非正規労働者が定年後再雇用された者であるかなど

今後は中小企業も含め、同一労働同一賃金をめぐって裁判に至るケースが増加するかもしれません。待遇差の判断においては様々な要素が絡むため一筋縄ではいきませんが、企業側は諸制度および運用ルールを明確にしたうえで、労働者にきちんと伝えておくことがトラブル防止のポイントとなるでしょう。

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