遺族厚生年金の見直し案
~子がいない配偶者に対する遺族厚生年金の男女差の是正~
厚生労働省は2024年7月30日、厚生年金に加入する会社員らが死亡した際、子(18歳になる年度末までで一般的に高校卒業まで)がいない場合の配偶者が受け取る遺族厚生年金の男女差を是正する方針を示しました。
1985年制度開始当時の主たる生計維持者は夫という概念は薄れ、現在は妻である女性の就業の進展に伴い夫婦で生計を維持する共働き世帯が7割まで増加しており、そのような社会経済状況の変化を踏まえての改正です。
なお、子のいる世帯、60歳以上で配偶者と死別した人および既に遺族厚生年金を受け取っている人は現行制度が維持されます。早ければ、来年の通常国会に関連法案が提出される予定です。
■現行の「子がいない遺族厚生年金」 |
遺族基礎年金は子がいない場合、遺族が夫も妻も年金は支給されませんが、現行の遺族厚生年金は子供がいない場合、遺族となった配偶者の性別と年齢により受給内容がかわります。
◎遺族が妻の場合は、死別時に29歳以下なら5年受給の有期給付、30歳以上であれば生涯受給となります。
◎遺族が夫の場合は、死別時に55歳以上であれば60歳から生涯受給ですが、55歳未満の夫は1円も受け取れない。
■「子がいない遺族厚生年金」改正案 |
改正案は、20~59歳で子がいない配偶者が対象で、遺族となった配偶者が
■夫の場合は、施行日より一律5年受給。
■妻の場合は、5年受給の対象者を施行日に現状の29歳以下から39歳以下に引上げ、その後さらに59歳以下まで十分な時間をかけて段階的に引上げ。
最終的には夫も妻も同じ5年受給になる内容です。
この改正案では、夫の場合は保障が手厚くなるのに対して、30歳以上の妻の場合は生涯受給から5年受給と受給期間が短くなることから、厚生労働省は以下の配慮措置を設けます。
- 婚姻期間に応じて配偶者の老齢厚生年金を増額
- 遺族の年収要件の廃止
※現行要件:年収850万円未満 - 遺族厚生年金の増額(有期給付加算)
※現行年金額:老齢厚生年金の3/4相当額
■夫を亡くした子のいない妻が受給する「中高齢寡婦加算」も段階的に廃止 |
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金の受給権取得当時40歳以上65歳未満である中高齢の夫の亡くした妻(妻を亡くした夫は対象外)がその後に就労することが困難であることに着目して、受給権発生から65歳に達するまでの間に遺族厚生年金に加算されるものです。
改正案では、この中高齢寡婦加算も男女差の是正の観点から段階的に減額され最終的に廃止される予定です。
今回の厚生労働省が示した「遺族年金制度等の見直しについて」には、上記以外に「国民年金の寡婦年金の段階的廃止」「遺族基礎年金の子に対する支給停止規定の見直し」も含まれています。 |
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