ADVANCEコラム

働く高齢者の現状と労働災害防止の取組みについて

少子高齢化の進行と平均寿命の伸長を背景に、近年働く高齢者の数が増えています。皆様の事業所では如何でしょうか。厚生労働所から公表されているデータによりますと、60歳以上の雇用者数は着実に増加しており、その理由は人口比率増加や体力向上、「高年齢者雇用安定法」にもとづく雇用確保、平均寿命伸長による老後資金への不安などが考えられます。従来に比べて長くなった老後期間の過ごし方を、労働にあてれば家計の助けとなり、人によっては生きがいにもつながるでしょう。しかしその一方で、加齢にともなう聴力、視力、平衡感覚、筋力等の低下は避けられず、それが労働災害につながってしまうケースもあります。労働災害の具体的な種類別では男性が墜落・転落、女性では転倒の発生率が顕著です。
事業者から提出される労働者死傷病報告の集計結果によると、労働災害発生率は男女ともに最小となる25~29歳と比べ、65~69歳では男性で2.0倍、女性で4.9倍と高くなっています。労働災害の種類別では男性が墜落・転落(約4倍)、女性が転倒(約15倍)での発生率が顕著です。
 それでは雇用側の高齢者の労働災害防止に対する取組み状況はどうでしょうか?
 具体的な取組み内容は、「健康診断実施後に健康診断の結果を踏まえて就業上の措置を行っている」「作業前に体調不良等の異常がないか確認している」「時間外労働の制限・所定労働時間の相談等を行っている」といったものが挙げられます。こうした取組みで労働災害を防ぐためには、働く高齢者が職場で気づいたリスクや、自身の健康状態を話しやすくする雰囲気づくりが大切です。また、特に製造業や建設業においては「通路の段差の解消」「床や通路の滑り防止」「休憩場所の整備」など、環境面の改善が災害防止に役立ちます。これらは高齢者に限らず、あらゆる年齢層の労働災害を防ぐ有効な手立てになるでしょう。
 高齢者は健康面や体力面の不安が多くなる反面、経験に裏打ちされた技術や知見を持っています。企業としては働く高齢者を単なる労働力ではなく、意見を尊重しながらともに生産性向上を目指す存在と見ることが、今後の成長を左右するカギになるかもしれません。

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