近年、脳の機能に関する研究が進み、加齢による脳の変化などが明らかになってきました。その中で、脳は高齢になっても鍛えられることが分かってきています。何もしなければ年齢とともに衰えていくばかりですが、日々の生活習慣を見直すことで脳の若返りも期待できるとも言われています。そこで、脳の健康や若々しさの維持・増進につながる日常生活のポイントについてまとめました。
脳が老化するとは
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年齢を重ねると「最近もの忘れが多い」「記憶力が低下した」と感じることが増えていきます。これは、加齢にともない脳の体積が減少するなど、脳でさまざまな変化が起こることが影響しています。
ヒトの脳は、20歳くらいをピークに萎縮しはじめ、体積が減少していくことが分かっています。脳の中でも特に加齢による萎縮が進みやすいのは、神経細胞が多く集まっている灰白質と呼ばれる領域です。灰白質が萎縮すると、その領域を構成している神経細胞が減少することになり、その結果、記憶や意味の理解、言語の流暢性といった高次認知機能の低下につながると考えられています。もちろん加齢による影響には個人差が大きくありますが、実は思っているよりも若いうちから脳の加齢が始まっていることが分かってきました。
一方で、脳の神経ネットワークに関わる神経線維(軸索)が多く集まっている白質と呼ばれる領域は、30代から50代くらいまで緩やかに体積が増え続け、その後は減少していくのですが、この白質は鍛えることができるのです。例えば、70歳を過ぎてから初めてピアノに挑戦して弾けるようになる人もいるように、高齢になってからでも新しい能力を獲得できるのは、白質において神経ネットワークが新生・強化されることが影響していると考えられています。
脳の老化を促進する4つの要因 |
5~80 歳までの約3, 000人に対して行った脳MRI検査の結果から大規模な脳画像データベースを作成し、脳の形態と機能、生活習慣、認知機能などの関係性を調べる研究が行われました。それらの研究から、脳の老化ともいえる、脳の萎縮や機能の衰えを促進するいくつかの要因が明らかになってきました。
その1つは「加齢」そのものです。歳を重ねるにつれて脳の神経細胞が減少するなど、脳が徐々に変化するためです。そのほかにも、脳の老化には主に4つの要因が関係していることが分かってきました。
1.喫煙 タバコを吸うと、全身の細胞への酸素供給が低下するほか、動脈硬化を促進します。その影響は脳細胞にもおよび、結果的に脳の萎縮を促進するといわれています。 2.飲酒 3.肥満 4.うつ |
脳の衰えを防ぐ生活習慣と脳を活性化する行動 |
脳の衰えを防ぎ、若々しくいられるようにするにはどうすればいいでしょうか。これまでに報告されてきた数多くの研究成果の中でも、信頼性が高い6つの方法についてご紹介します。
1.運動 脳の体積減少を抑えて、脳を健康に保つ方法として特に有効だとされているのが運動です。息が少し弾むくらいの中強度の有酸素運動を30分から1時間程度、週に2~3回行うことで脳の血液内の成長促進成分(脳由来神経栄養因子/BDNF:brain derived neurotrophic factor)が増え、脳の神経新生を促して海馬の体積が増えるという報告があります。筋肉トレーニングも有酸素運動と同様の効果があることが分かってきています。最近では、早歩きや階段上りなど、ジョギングほどの強度がない運動でも効果が期待できるといわれています。 2.趣味活動 3.会話、他者とのコミュニケーション 4.バランスの良い食事 5.十分な睡眠 6.幸福感、ポジティブな感情 |
※1 地中海沿岸の国々の人が食べている伝統的な料理。オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使い、果物や野菜、魚を多く使う。食事の際に適量のワインを飲むことが特徴。
何歳から始めても手遅れということはない |
ここで紹介した6つの項目のうち、運動、睡眠、食事という3つは生活習慣病予防と共通しています。脳の衰えや認知症には加齢の影響もありますが、生活習慣との関わりも大きく、高血圧や糖尿病血糖値をコントロールすることにも似ています。趣味、会話、幸福感など、自ら行動を起こすことで脳に刺激を与えることになります。
大切なことは、今の年齢に関わらず、思いついたその日その瞬間から、脳の健康を意識した生活を始めることです。20代、30代の人に「将来の認知症リスクを低減するために生活習慣を変えよう」と訴えても意識しにくいとは思いますが、中高年になってからいざ運動習慣を身につけようと思っても難しいので、早いほうが始めやすいというメリットがあります。
70歳、80歳からでは手遅れということもありません。脳には可塑性があり、いくつになっても新しい能力を獲得できるポテンシャルがあります。脳が衰えるスピードを少しでも遅くして、認知症や認知機能低下のリスクを下げるという意味でも、今すぐ生活習慣を変えることは確実にプラスに働きます。運動、楽器の演奏、規則正しい食生活や睡眠など、まずはできることから1つずつ実践してみましょう。
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