ADVANCEコラム

令和2年度に査察の対象となった脱税事案について

不正な手段で税金の支払いを免れる脱税に対しては、世間から厳しい目が向けられています。とりわけ査察の対象となる悪質な脱税には刑事罰が科せられ、たびたび大きなニュースとなります。査察が行われる事案について、昨今の実態はどのようになっているでしょうか?

 

  • 査察の処理件数や着手件数は前年度を下回る

国税庁が公表している「令和2年度査察の概要」によると、同年度に処理(検察庁への告発の可否を判断)された脱税事件は前年度より52件少ない113件で、その脱税総額は前年度を24.5%下回る約91億円(1件当たり平均8000万円)でした。また全国の国税局が査察に着手した件数は111件と、前年度を39件下回りました。いずれもここ数年の中で低水準となった要因には、コロナ禍で立入調査等に制限が出たことも考えられます。

継続事案を含めて処理された113件のうち、83件が検察庁に告発され、令和2年度の告発率は73.5%となっています。告発分を税目別にみると、以下の件数と脱税総額になっています。

 

法人税:55件/約38億円

所得税:8件/約8.9億円

消費税:18件/約20.3億円

源泉所得税:2件/約1.8億円

相続税:0件

 

  • 告発された重点事案の件数と事例

令和2年度査察における告発分の脱税総額は約69億円で、重点事案として「消費税不正受還付事案」9件、所得を秘匿するなどの「無申告ほ脱事案」13件、「国際事案」27件が告発されました。具体的には以下のような事例があります。

 

・金地金の輸出販売を装った消費税不正受還付事案

・脱税指南コンサルタント会社の単純無申告ほ脱事案

・海外法人を利用して法人税を免れた宝飾品製造会社を告発

 

査察における取り組みとして、令和2年度は悪質な脱税者へ厳正に対処しつつ、「身体的距離の確保」「マスクの着用」「手洗いの徹底」といった感染防止策が講じられました。コロナ禍がなかなか収束しない中、令和3年度の査察ではどのような動きが出るか、引き続き注視したい所です。

 

【参照】国税庁「令和2年度査察の概要」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/sasatsu/r02_sasatsu.pdf

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