老後の備えとして重視したい公的年金ですが、経済的な事情などから国民年金の保険料を納付できない人もいます。そのような場合に利用できる保険料免除や猶予制度も含め、直近の保険料納付状況を確認しましょう。
- 全額免除・猶予者が過去最多の人数に
厚生労働省が公表している令和2年度のデータによると、国民年金の全額免除・猶予者は前年度比26万人増の約609万人となっています。これは基礎年金制度が導入された1986年度以降、最多の人数です。コロナ禍による経済の低迷や所得減少もその要因と考えられ、国民年金の第1号被保険者(任意加入含む)1,449万人のうち4割以上が全額免除・猶予者という計算です。また公的年金加入者6,740万人のうち未納者の人数も115万人と、決して少なくありません。
全額免除・猶予者は「法定免除者」「申請全額免除者」「学生納付特例者」「納付猶予者」に分類され、免除・猶予を受けるにはそれぞれ要件を満たす必要があります。全額免除とならない場合も「申請3/4免除者」「申請半額免除者」「申請1/4免除者」の要件に当てはまれば保険料の一部免除を受けられ、令和2年度の一部免除者は合計で36万人です。
- 「現年度納付率」「最終納付率」ともに上昇傾向
国民年金保険料の納付率は、「(納付月数÷納付対象月数)×100」という算式で表されます。納付対象月数とは当該年度分の保険料として納付すべき月数(法定免除月数、申請全額免除月数、学生納付特例月数、納付猶予月数および産前産後免除月数を含まない)のことで、納付月数とはそのうち実際に納付された月数です。なおデータとしては納付状況の途中経過を示す「現年度納付率」および「過年度1年目納付率」と、未納分をさかのぼって納付できる過去2年分を集計した「最終納付率」に分かれます。
令和2年度における国民年金保険料の「現年度納付率」は71.5%で、平成23年度の58.6%から9年連続の上昇となっています。平成30年度分保険料の「最終納付率」も77.2%で、同様に上昇傾向です。ただし納付率の計算では全額免除・猶予者が除外となるため、それを加味した数字も考慮する必要があります。参考に第1号被保険者のうち納付者等の割合を計算すると、約5割にとどまっています。
将来受け取れる年金額は実際に納付した保険料が反映されるので、現在全額免除・猶予者となっている人も未納期間がある人も、余裕ができればなるべく追納しておきたい所です。保険料の負担は小さくありませんが、長生きした際の生活費に備える収入源として、生涯受け取れる公的年金は最適と言えるでしょう。
【参照】厚生労働省「令和2年度の国民年金の加入・保険料納付状況について」
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