ADVANCEコラム

ふるさと納税調査結果から読み取れる現状と課題

利用者のメリットが大きいふるさと納税は年々盛り上がりを見せ、今や寄付総額が1兆円に迫る勢いです。魅力的な返礼品等によって税収を大幅に伸ばす自治体がある一方で、主に都市部からの税流出も続いています。総務省の行った調査から読み取れる、ふるさと納税の現状と課題について紹介します。


◎寄附金の受入額は令和元年度の2倍に

総務省が今年8月に公表した「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、令和4年度のふるさと納税受入(寄附)件数は約5,184万件、受入額は約9,654億円で、いずれも過去最高を更新しました。令和元年度と比較して受入件数は2.2倍、受入額は2.0倍と急増います。

その要因は感染症拡大による「巣ごもり消費」、食料品等の物価高騰、災害被災地の支援などが考えられます。自己負担2千円(収入や家族構成による寄附限度額を超えない場合)で好きな自治体を応援し、特産物などの返礼品を受け取れるふるさと納税の需要は、今後ますます高まるかもしれません。

市区町村別の受入額では宮崎県都城市が約196億円でトップ、続いて北海道紋別市(約194億円)北海道根室市(約176億円)北海道白糠町(約148億円)大阪府泉佐野市(約138億円)の順で多くなっています。魅力的な返礼品をPRしている自治体、寄附金を生かした独自の取組みを行っている自治体、自然災害の影響が大きく報じられた自治体などで、受入額を伸ばす傾向が見られます。

◎税流出によるサービス後退の懸念あり

ふるさと納税に関しては自治体間の過度な「返礼品競争」を抑制する目的で、寄付金額に対して返礼品は3割以下、費用は5割以下というルールが設けられています。上記調査結果で確認すると、令和4年度の全自治体平均で「返礼品の調達に係る費用」は27.8%、「募集に要した費用」(返礼品の調達・送付、広報、決済等、事務の合計)は46.8%でした。概ねルールに準じた運用が行われていると読み取れますが、裏を返せば本来の目的である町づくり等に、寄附金の半分しか生かされていないとも言えます。

また制度を通じた税流出も問題化しており、例えば東京都では約53億円の寄附金受入に対して、約1,688億円の住民税控除額(本来得られるはずだった住民税)が生じています。都市部から地方へ富の分配が機能しているという見方もできますが、税収が細ることによって生活サービスや災害対策が後退してしまう懸念は残ります。

また地方でも返礼品等の「ヒット商品」が開発できなければ寄附金を集められず、格差が広がってしまう状況も無視できません。ふるさと納税は利用者にとってお得な制度で、各自治体の努力が反映される面もありますが、本当に人々を豊かにしているのか検証の余地はあるかもしれません。

参照:「ふるさと納税に関する現況調査結果」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000897133.pdf

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