ADVANCEコラム

企業活動で注目されるオープンイノベーション促進税制

企業を取り巻く状況が複雑さを増す現在、新たな技術やサービスをより速いスピードで開発することが求められています。方法の一つとして既存企業がベンチャー企業と協働し、開発を進めるオープンイノベーションが注目され、税制改正でも促進策が盛り込まれました。その内容を確認しましょう。

日本では以前から技術やサービスを自社で開発する発想が強く、革新性のあるベンチャー企業との協働が欧米に比べて遅れています。とりわけスピード感が重視される分野では、開発にかかる時間がネックとなり、競争力を失ってしまう要因のひとつと考えられます。

政府も経済産業省を中心に危機感を抱いており、令和2年度税制改正の大綱には「既存企業が従前の閉鎖的でコストの高い自己開発にこだわることなく、新たな分野に投資するなど自ら事業革新を進めることは、この時代において企業が生き残るために必要不可欠である」と記載しています。それを踏まえて新しい技術・ノウハウ等を持つベンチャー企業と協働し、オープンイノベーションの取り組みを重点的に進めていくため、税制において出資の一定額の所得控除を認める措置を設ける運びとなりました。

税制の具体的な内容は、中小企業においては以下の通りです。

①青色申告書を提出する中小企業者で特定事業活動を行うもの(自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業または新たな事業の開拓を行うことを目指す株式会社等)が、令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に特定株式を取得した場合には、その取得価額の25%を損金算入できる

②特定株式の譲渡その他の取崩し事由に該当することとなった場合には、その特定株式の取得から5年を経過している場合を除き、その事由に応じた金額を益金算入する

 

なお、上記の特定株式とは、産業競争力強化法の新事業開拓事業者のうち特定事業活動に資する事業を行う内国法人(既に事業を開始しているもので、設立後10 年未満のものに限る)の株式のうち、その払込金額が1,000万円以上であることなど、一定の要件を満たすことにつき経済産業大臣の証明がある株式を指します。

※特定株式にかかる払込金額は中小企業以外については1億円以上、外国法人への払込金額は5億円以上と別途定義されています。

 

オープンイノベーション税制を活用すれば、開発の迅速化とともに税額軽減も受けられるメリットがあります。ただし協働するベンチャー企業の株式を一定期間内に譲渡した場合などは、損金算入が認められなくなってしまうため注意が必要です。

経済産業省の資料ではオープンイノベーションの効果として、必要な技術・ノウハウや人材の補完またはコスト削減などが挙げられています。自社内にこだわらず外部の有効な知見を生かしていくことは、これからの企業活動における必須条件なのかもしれません。

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