労働者のケガや病気に備える労災保険制度には、業務との因果関係等によって給付を受けられるかどうかの認定基準が定められています。最近の改正では脳・心臓疾患に関する労災認定基準が変更されましたが、その内容を確認しましょう。
- 労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価
令和3年9月に厚生労働省が都道府県労働局長へ向けて行った「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」という通知の中で、脳・心臓疾患の労災認定基準を新たに定めることが言及されました。
業務による過重負荷を原因とする脳・心臓疾患の認定基準は、それまで平成13年12月改正のものが使われていましたが、働き方の多様化や最新の医学的知見といった要素を踏まえた検証の結果、基準改正の運びとなりました。改正のポイントを以下に記します。
発症との関連性が強い長期間の過重業務について、「発症前1か月間に100時間または2~6か月平均で月80時間を超える時間外労働」などの基準は、従来から変わりません。改正後はそれに加え、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価し、労災認定することが明確化されました。労働時間以外の負荷要因にあたる評価対象として、「勤務間インターバルが短い勤務」「身体的負荷を伴う業務」といった項目が追加となっています。
- 対象疾病として「重篤な心不全」が追加
新たな認定基準においては、短時間の過重業務・異常な出来事と、発症との関連性が強いと判断できる場合についても、次のような例示で明確化されました。その一部を紹介します。
<短時間の過重業務の例>
・発症前おおむね1週間に継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど、過度の長時間労働が認められる場合
・発症直前から前日までの間に、特に過度の長時間労働が認められる場合
<異常な出来事の例>
・業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
・事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合
・生命の危機を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
また、不整脈が一義的な原因となった心不全症状等は、改正前は対象疾病の「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱われていましたが、心不全は心停止とは異なる病態です。そのため改正後は新たな対象疾病として「重篤な心不全」が追加され、不整脈によるものも含むこととされています。
以上のような労災認定基準に当てはまるのは、よほど重大なケースというイメージもありますが、繁忙期の時間外労働やそれに伴う体調不良は誰にでも起こりえます。労働者自身の健康管理はもちろん、過度の負担をかけない労働環境を整備することが、事業主の重要な責務と言えるでしょう。
【参照】血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について
https://www.mhlw.go.jp/content/000832096.pdf
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