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税務当局の処分に不満がある場合の救済制度でどれほど主張が認められるか?

国税局や税務署などによる税務調査は広く知られる所ですが、更生・決定といった処分に対して不満がある場合の救済制度についてはあまり馴染みがありません。どのような制度があって、納税者の主張はどれほど認められたのか、令和元年度のデータから確認しましょう。

納税者が税務当局の処分に不満がある場合は、税務署等に対する再調査の請求や国税不服審判所に対する審査請求という行政上の救済制度と、訴訟を起こして裁判所に処分の是正を求める司法上の制度があります。

国税庁が公表した資料によれば、再調査の請求が行われた件数は1,359件でした。請求に対する処理件数(令和元年度以前の請求を含む)は1,513件で、内訳は取下げ等187件、却下125件、棄却1,014件、一部認容141件、全部認容46件となっています。納税者の主張が認められたケース(一部認容と全部認容の合計)は187件となり、処理件数全体に占める割合(救済割合)は12.4%です。

また、国税不服審判所への審査請求の発生件数は、同審判所の資料では2,559件となっています。請求に対する処理件数は2,846件で、内訳は取下げ348件、却下134件、棄却1,989件、一部認容285件、全部認容90件でした。したがって納税者の主張が認められた救済割合は、13.2%となります。

一方、訴訟となった発生件数は、国税庁の資料から223件でした。訴訟の終結件数は216件で、内訳は取下げ等21件、却下10件、棄却164件、国の一部敗訴5件、国の全部敗訴16件となっています。これにより国側の敗訴、つまり納税者の勝訴となったケースの割合は9.7%です。

以上のデータにより再調査の請求・審査請求・訴訟を通して、納税者が救済されたか勝訴したケースは令和元年度で合計583件となり、処理または終結の全体(4,575件)に占める割合は12.7%でした。救済制度を利用した納税者の約8人に1人は主張が認められたという計算で、制度利用の価値はあると考えられます。しかし主張が全部認められたケースに限ると、合計152件で3.3%(約30人に1人)にすぎません。また請求時の提出書類や、結果が出るまでの時間を考慮すると、決して少なくない労力が必要となるでしょう。税務調査の段階で指摘を避けられればそれに越したことはないため、やはり普段から帳簿や領収書などをしっかり整理しておくことが重要なポイントになります。

 

【参考】国税庁「令和元年度における再調査の請求の概要」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/saichosa/index.htm

国税不服審判所「国税不服審判所の概要等」

https://www.kfs.go.jp/introduction/demand.html

国税庁「令和元年度における訴訟の概要」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/sosho/index.htm

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