ADVANCEコラム

新型コロナウイルス感染症で労災が認められるケースとは?

新型コロナウイルス感染症の影響で企業活動に制限が生じている中、労働者の感染が労災の対象になるのかも新たな悩みの種となっています。医療従事者に限らず様々な業種で感染リスクは存在するため、関連する労災補償の基本的な考え方を確認しましょう。

厚生労働省が今年4月に出した「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」という通知では、感染で労災の対象となるものを以下のように定義しています。

(1)国内労働者の場合

ア.医療従事者等・・・医師、看護師、介護従事者等は、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災の対象になる。

イ.医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの・・・感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災の対象となる。

ウ.医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの・・・調査により感染経路が特定されない場合でも、「複数の感染者が確認された労働環境下での業務」「顧客等との近接・接触の機会が多い労働環境下での業務」など、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときは、業務により感染した蓋然性が高いため、個々の事案に即して適切に判断する。その際は、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況等の調査に加え、医学専門家の意見も踏まえて判断する。

(2)国外労働者の場合

海外出張労働者については、出張先の国において明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合、出張業務による感染かどうかを個々の事案に即して判断する。海外派遣特別加入者については、国内労働者に準じて判断する。

いずれの場合も業務と感染の関連性が焦点となりますが、最終的には労働基準監督署の判断となります。したがって会社側が労災の請求時、認定の可否を断定するのは誤った対応です。

労災の判断が難しいのは、医療従事者等以外で感染経路が特定されないケースです。厚生労働省ホームページには、新型コロナウイルス感染症に関する労災認定事例も掲載されているため、そのうち一つを紹介します。

【小売店販売員Gさんのケース】

店頭での接客業務等に従事していたGさんは、発熱や咳等の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。労働基準監督署の調査でGさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間は日々数十人と接客し商品説明等を行っており、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。一方、発症前14日間の私生活での外出は日用品の買い物や散歩などで、私生活における感染リスクは低いものと認められた。医学専門家からは、接客中の飛沫感染や接触感染が考えられるなど、業務により感染した蓋然性が高いと認められるとの意見だった。

以上の経過から感染経路は特定されないものの、Gさんは顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務に従事していたと認められました。業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、労災認定された事例として掲載されています。

労災請求後の調査では、業務時と私生活においてどのような行動を取ったかが大きなポイントとなります。感染した労働者も時間が経てば行動の記憶が薄れてしまうため、報告を受けた会社側は早い段階でヒアリングを行い記録するなど、後に争点を残さない対応が求められるでしょう。

【参照】厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」

https://www.mhlw.go.jp/content/000626126.pdf

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例」

https://www.mhlw.go.jp/content/000647877.pdf

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