ADVANCEコラム

研修・教育訓練等はどのようなものが労働時間に該当するのか?

労働基準法の改正により、ご承知のとおり、今年4月から中小企業でも時間外労働の上限規制が適用されています。社員に対する研修・教育訓練等にも様々なパターンが考えられる中、どのようなものが労働時間に該当するのか、関連する労働時間についてお伝えします。
労働時間の定義は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。使用者の明らかな指示または暗黙の指示によって労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当するものです。したがって名目上は休憩時間でも、実際に労働から解放されていない状態なら労働時間とみなします。
 研修・教育訓練に関しては、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、それに費やされた時間は労働時間に該当しません。ただし「研修・教育訓練等に不参加であったことが就業規則で減給処分の対象」「不参加によって業務を行うことができない」など、事実上参加を強制されているケースでは、自由参加の体裁でも労働時間に該当します。
とりわけ判断が難しいのは、勤務時間外や休日に行われる研修・教育訓練等で強制参加と明示されていないものの、当然参加するべきと解されるようなケースです。線引きが曖昧になっていると労使間あるいは労働者間で解釈が分かれ、トラブルになることも考えられます。厚生労働省のリーフレットでは、労働時間に該当するかしないかの具体例を以下のように紹介しています。
①労働時間に該当しない例
・終業後の夜間に行うため、弁当が提供されるものの参加の強制はせず、参加しないことで不利益な取り扱いもしない勉強会
・労働者が会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て単独でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練
②労働時間に該当する例
・使用者が指定する社外研修について休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修
・自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学
労働基準法では時間外労働の限度時間が厳格に定められており、特に最近増加しているテレワークでは、どのような状態が労働時間に該当するかの判断がしにくくなっています。研修・教育訓練等をテレワークで行う機会も想定されるため、あらかじめ就業規則等で受講指示の取り扱いを明記することが重要となります。
 また、受講者にそれぞれの研修・教育訓練等が業務上の義務かどうかはっきりした形で伝えるなど、指示方法の工夫も欠かせません。使用者と労働者が良好な関係で業務を進めるため、労働時間に関する周知徹底が大きなポイントになります。

【参照】厚生労働省リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/000556972.pdf

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP