ADVANCEコラム

厚生年金保険における標準報酬月額の上限改定について

会社員など社会保険の加入者は、毎月の給与から厚生年金保険料が控除されています。老後生活の軸となる大切な年金ですが、保険料を計算するための標準報酬月額について、今年9月から上限が改定されました。今回はその改定内容を紹介します。
 日本年金機構のアナウンスによると、厚生年金保険法の規定に基づき、令和2年9月から標準報酬月額の上限が変更となりました。具体的には、従来の上限等級である31級(標準報酬月額62万円)の上に、32級(標準報酬月額65万円)が追加されます。標準報酬月額は原則として毎年4月~6月の給与の平均額によって等級が決まるため、今回の改定は報酬が高い層を対象としたものです。等級追加は平成12年10月以来、20年ぶりとなりますが、どのような背景があるのでしょうか?
厚生年金保険の上限等級については、「年度末時点の全厚生年金被保険者の平均標準報酬月額【A】の2倍が、標準報酬月額の上限を上回る状態」が継続すると見込まれる場合は政令で引き上げ可能とされています。平成28年度末の例では319,721円【A】×2=639,442円で標準報酬月額の上限(62万円)を上回っており、その後も同じ状況が続いていました。また、従来の上限等級(31級)に該当する被保険者は平成29年度末で全体の約6.8%にのぼるため、以前から議論となっていた見直しが実現したという経緯です。
標準報酬月額の上限改定によって、該当者の保険料負担額はどう変わるのでしょうか?従来の31級(標準報酬月額62万円)が32級(標準報酬月額65万円)に引き上げられるケースでは、厚生年金保険の保険料率(18.3%)により以下の計算となります。

改定前の保険料:620,000円×18.3%=113,460円
改定後の保険料:650,000円×18.3%=118,950円

したがって該当者は毎月5,490円の負担増となりますが、保険料は事業主と被保険者で折半のため、それぞれの負担増は毎月2,745円です。保険料を支払う側としては損をするイメージがあるものの、標準報酬月額は将来年金を受給する時の計算にも反映されるため、被保険者にとってはメリットもある改定と考えられます。
なお改定後の32級に該当する被保険者がいる場合、事業主および船舶所有者に対して、令和2年9月下旬以降に日本年金機構より「標準報酬改定通知書」が送付される予定です。事業主および船舶所有者の特別な手続きは必要ありませんが、該当者には改定による手取り額の変更など、早目に周知した方が良いでしょう。

参照:日本年金機構「厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202009/20200901.html

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