ADVANCEコラム

中小企業向け所得拡大促進税制の要件と改正による変更点

企業経営において必要な人材を確保するため、給与も含めた待遇改善は欠かすことができません。特に予算の限られる中小企業では、所得拡大促進税制の利用も重要な検討材料となりますが、税制改正により要件が変更される見込みです。その内容を確認しましょう。

中小企業向け所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定要件のもと前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の15%を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。現行の要件として「継続雇用者給与等支給額」の増加率が、前事業年度比で1.5%以上を満たさなくてはなりません。

なお上記の増加率が前事業年度比で2.5%以上を満たし、次の要件いずれかに当てはまる場合は税額控除率が25%となります。

・教育訓練費が前事業年度比で10%以上増加

・中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受け、経営力向上が確実に行われている

 

令和3年度税制改正大綱によると、 中小企業向け所得拡大促進税制について、一定の要件見直しを行った上で適用期限を令和5年3月31日まで2年延長します。具体的には増加率の比較対象となる「継続雇用者給与等支給額」が、「雇用者給与等支給額」に変更されます。これにより判定対象が2期継続して雇用した者の給与額ではなく、全体の給与総額となるため、要件に当てはまるケースが増えるかもしれません。

判定にあたっては給与等の支給額から「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」を控除する必要がありますが、改正によりその範囲が明確化されるとともに、次の見直しが行われます。

1.要件を判定する場合には、「雇用調整助成金等及びこれに類するものの額」を控除しないこととする。

2.税額控除率を乗じる基礎となる雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額は、「雇用調整助成金等の額及びこれに類するものの額」を控除して計算した金額を上限とする。

 

以上をまとめると雇用調整助成金等について、要件判定では差し引かない一方で税額控除計算の際は差し引くという違いはあるものの、実務的に要件判定の計算がシンプルになったと言えるでしょう。税制改正大綱は国会を通過するまで確定事項ではありませんが、中小企業向け所得拡大促進税制の要件を満たす場合は、ぜひ活用したいものです。

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