組織の規模は小さくても、優れた技術や知見を持つ企業は少なくありません。貴重なノウハウを将来につなぐためには、経営者自身の引退を見据えた事業承継の準備が大切です。事業承継に関する最近の傾向や、ポイントについて整理しましょう。
- 後継者の選定と引継ぎ期間の確保が必須
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」によると、2020年における経営者の平均年齢は約60歳となっています。1990年の平均年齢が約54歳だったので、ここでも高齢化が進んだと言えるでしょう。その一方で経営者の交代率は下落傾向にあり、多くの企業で事業承継の課題に悩む現状が見て取れます。
実際に休廃業・解散となった企業の約6割が、直前期に黒字だったという状況も続いています。優良な企業が後継者不在によって廃業せざるを得ないのは、雇用や地域経済の観点でも大きな損失です。良い形で事業承継を進めるには、どのようなことに留意すれば良いでしょうか?
事業承継の検討にあたっては後継者の選定、引継ぎ期間の確保が必須となります。後継者の類型には「先代経営者の親族」「社内役員・従業員からの昇格」「外部招へい」などがあり、身内であるほど引継ぎ期間が長くなる傾向です。特に親族が後継者の場合はその期間が5年超となるケースも多く、現経営者が培ったノウハウや影響力は簡単には吸収できないことを物語っています。
- 事業承継の検討ツール活用も有効な手段
近年は事業をとりまく環境変化が著しく、経営のスピード感を加速させるためにも引継ぎを着実に行いたい所です。有力な後継者候補がいる場合でも、本人に承継の意思がなければ計画の前提が崩れてしまいます。まずは後継者候補に対して会社を託す意思があることを明確に伝え、返事を貰ったうえで、下記のような事項を確認・整理していくことがポイントです。
(1)財務、税務、人事等で問題やトラブルの種になりそうな要素はないか。
(2)経営状況・経営課題等の把握(見える化)がされていて、重要な書類関連がまとまっているか。
(3)株式や事業用資産を譲渡する場合の買取資金および節税対策案を講じているか。
そのほか中小企業庁では、事業承継の検討を進めるためのツール(自己診断チェックシートや承継計画のひな型等)、相談窓口といった各種の支援策を揃えています。活用することで引継ぎのイメージを具現化できるかもしれません。
【参照】中小企業庁「事業承継ガイドライン」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
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