ADVANCEコラム

職場におけるハラスメント防止対策に関する法改正について

職場におけるハラスメントの問題は、被害を受けた労働者側が我慢することで表に出なかった事案も多数あります。しかし企業の管理体制に厳しい目が向けられる昨今、もはや当事者同士の問題では片づけられません。今回は職場におけるセクシュアルハラスメント等の防止対策について、関連法の改正内容を紹介します。

男女雇用機会均等法および育児・介護休業法の改正により、職場におけるセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止対策が強化されました。改正法の施行は事業所の規模を問わず、2020年6月1日です。

まず職場におけるセクシュアルハラスメントの定義として、「労働者の意に反する性的な言動への労働者の対応により、労働条件について不利益を受けること」「性的な言動により労働者の就業環境が害されること」が示されています。

性的な言動を行う者の範囲は事業主、上司、同僚が一般的なイメージですが、取引先の事業主や労働者、顧客、患者またはその家族、学校における生徒なども含まれます。また、性的な言動は被害を受ける人の性的指向や性自認にかかわらず、同性に対するものもセクシュアルハラスメントに該当します。

これらに対する事業主の防止措置は、従来の男女雇用機会均等法でも義務付けられていました。しかし2020年6月1日よりそれに加えて、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取り扱いの禁止、自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応が義務となっています。もし他社から事実確認や再発防止といった、雇用管理上の措置に関して必要な協力を求められたら、これに応じるよう努めなくてはなりません。逆に他社の労働者から自社の労働者がセクシュアルハラスメントを受けた場合も、事業主は雇用管理上の措置として適切に相談に対応する必要があります。

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの定義は、「職場において行われる上司・同僚からの言動により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されること」を指します。ここでの言動とは妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関するものです。

ハラスメントに該当するかどうかは、妊娠の状態や育児休業制度の利用等と、嫌がらせとなる行為との因果関係が判断基準となります。典型的な例では、産前休業の取得を上司に相談したところ、「休みを取るなら辞めてもらう」と言われたなどのケースが当てはまります。なお業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて業務上の必要性に基づく言動によるものは、ハラスメントには該当しません。

上記のハラスメントに対する防止措置に加え、2020年6月1日より相談したこと等を理由とする不利益取り扱いの禁止が義務付けられました。また今回の法改正によって、事業主や労働者に対して、主に以下の事項について努めることとする責務規定が定められています。

【事業主の責務】

・職場におけるハラスメントを行ってはならないこと

・その他ハラスメントに起因する問題に対する自社労働者の関心と理解を深めること

・自社労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修その他の必要な配慮をすること

・事業主自身(法人の場合はその役員)が、ハラスメント問題に対する理解と関心を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うこと

【労働者の責務】

・ハラスメント問題に関する理解と関心を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うこと

・事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること

責務規定で示されている労働者には、取引先等の他の事業主が雇用する労働者や、求職者も含まれます。ハラスメントと受け取れる言動を発した当人には、長年築いた関係性を背景に軽い気持ちで口にしたという意識もあるかもしれません。しかしそれは単に相手がずっと我慢していた可能性が考えられ、この先も許される保証はないと捉えるべきでしょう。良い関係性で仕事を続けるために、何気ない言葉がどのような影響を与えるかについて、もう一度相手の立場で考えることが大切です。

当社でも使用者賠償責任や雇用慣行賠償責任等の対応策につき、ご相談を受け付けております。

【参照】厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)資料

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

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