ADVANCEコラム

中小M&Aの支援措置とリスク軽減の方法等について

 

企業が事業転換や新たな分野への進出を実現するには、独自のノウハウ・販路などを持つ他の中小企業に対するM&A(第三者承継)も有効な手段です。それに伴う資金準備や契約の食い違い等によるリスクは無視できませんが、中小M&Aの安全性を高めるために活用できる制度はあるのでしょうか?

 

  • 目的に応じて様々な支援措置あり

中小M&Aを推進する主な支援措置には、目的に応じて以下のようなものがあります。

①気づきの提供 → 事業承継診断

②事業者間のマッチング → 事業承継・引継ぎ支援センター

③M&A時の費用負担軽減 → 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)など

④M&A後のリスクへの備え → 経営資源集約化税制(準備金)

⑤M&A後の設備投資等 → 事業承継・引継ぎ補助金(設備投資等)など

⑥雇用確保の促進 → 経営資源集約化税制(雇用確保)

 

上記のうち④で挙げた経営資源集約化税制(準備金)は、据置期間5年の準備金を措置し、M&A実施時に株式等取得額の70%以下の金額を損金算入することが可能となるものです。据置期間経過後または簿外債務が発覚した場合等には、準備金を取り崩します。この税制措置を受けるためには、経営資源の集約化によって生産性向上を目指す計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づくM&Aを実施する必要があります。

 

  • リスク軽減の保険商品と支援健全化への取り組み

M&A実施時のリスクの一つとして、表明保証をめぐるトラブルが挙げられます。表明保証とは契約に関する事項について、真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証するというものです。表明保証の事項に違反があった場合、相手方に生じた損害の金銭的補償を行う必要があります。

M&Aでも一般的に売り手側が買い手側に対して表明保証を行いますが、お互い希望する保証範囲が食い違い、合意を得ることが困難なケースも考えられます。そのような状況に備えるため、表明保証違反に伴う金銭的補償を保険金でカバーする保険商品の取り扱いも、一部の損害保険会社で始まりました。補償金額や対象案件は、保険のプラン等により異なります。

また中小M&Aでは、支援機関(仲介業者や金融機関など)による仲介が行われるケースも少なくありません。しかし十分な知見を持たない業者の参入や、支援に伴うトラブルを行政が把握できない懸念もあることから、健全化に向けた取り組みが始まっています。2021年度中にはM&A支援機関の登録制度が導入され、毎年の成約実績等の報告が義務づけられるほか、M&A仲介の自主規制団体も設立される見込みです。団体設立後は適正な取引ルールの徹底や人材育成等を通して、中小企業が安心して支援を受けられる環境の整備を目指しています。

これらの登録制度や団体が各社のM&Aにどのような影響を与えるか、今後の動きに注目です。

 

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