ADVANCEコラム

9月から自転車配達員も対象となる労災保険の特別加入とは?

様々な働き方が広まる中、特定の会社や組織に属さないフリーランスの形を取る人も少なくありません。関連して個人事業主の労災保険も特別加入できる業種が増えていますが、最近街中でよく見かける自転車配達員は、どのような取り扱いになるか確認しましょう。

 

  • 自転車配達員の保険料率は1.2%

今年6月に開かれた厚生労働省の労災保険部会では、労災保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱に関する審議が行われ、その内容は概ね妥当とされました。主な改正としてフード配達のアプリ等から受託やマッチングを行う自転車配達員(原動機付自転車または自転車を使用して行う貨物の運送の事業)も、2021年9月から労災保険の特別加入が可能となる予定です。

労災保険の特別加入とは、一定要件を満たす個人事業主等の労災保険への任意加入が認められ、業務中に負った怪我や休業が給付の対象となるものです。負担する年間保険料は給付基礎日額(個人事業主の場合は3,500~25,000円の範囲で申請)と、保険料率によって決まります。

今般の改正で自転車配達員の保険料率は、1.2%と定められました。これをもとに給付基礎日額1万円のケースで年間保険料を計算すると、10,000円×365日×1.2%=43,800円となります。自転車配達員と同日に特別加入が可能となるITエンジニア(情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業)の保険料率は0.3%のため、大きな差があると言えます。

参考に他の事業で定められている保険料率を一部挙げると、以下の通りです。

・自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業:1.2%

・建設の事業:1.8%

・漁船による水産動植物の採捕の事業:4.5%

・林業の事業:5.2%

 

  • 保険料の負担感などで加入が伸び悩む可能性も

上記から読み取れるように特別加入の保険料率は、従事する業務の危険度と比例します。ITエンジニアも長時間のデスクワークや不規則な生活リズムによって、心身に不調をきたす事例が多く報告されていますが、交通事故のリスクと隣り合わせの自転車配達員と比較して危険度は低いと言えるでしょう。

大きな怪我を負う可能性も考えれば多めに給付基礎日額を設定したい所ですが、それと合わせて保険料の負担が増すため躊躇する人がいてもおかしくありません。収入がなかなか定まらないフリーランスの立場においては、なおさら出費を抑えたいのも当然と思われます。

自転車配達員の労災保険について、改正後にどれだけの人数が特別加入するかは未知数です。保険料の負担感などで加入が伸び悩めば、制度の改善や新たな仕組みづくりが必要になるかもしれません。従事する業務に補償制度があることは、気持ちの余裕にもつながります。多くの人の働き甲斐や安全面の観点からも、フリーランスの自己責任で終わらせず、今後の動向を見守る必要がありそうです。

【参照:1】厚生労働省 :「第98回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19337.htm

【参照:2】アドバンスリンク:「ネットde保険@さいくる」

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