ADVANCEコラム

労使協定の締結による賃金控除のポイント

生活の見通しに不安を抱える労働者も多い中、毎月得られる手取り収入の金額は大きな関心事です。企業側は賃金支払いにあたって税額等を控除(天引き)するケースも多いですが、労使間でトラブルを避けるためのポイントを確認しましょう

賃金の支払い方法は原則として、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと、労働基準法で規定されています。これを賃金支払いの五原則といいますが、(3)全額払いの原則に関しては、例外として「法令に別段の定めがある場合」「労使の自主的協定がある場合」は、賃金の一部控除が可能です。前者(法令に別段の定めがある場合)に当てはまるものは所得税の源泉徴収、住民税、社会保険料の控除などです。

後者(労使の自主的協定がある場合)の例として、弁当代や親睦会費などの控除が挙げられます。ただしこれらを賃金から控除するためには労使協定の締結が必要で、企業側は協定の内容を、掲示や書面交付等により労働者に周知しなければなりません。

労使協定は企業と従業員の過半数代表者(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合)との間で締結する必要があります。なお賃金控除に関する労使協定は、労働基準監督署への届出は不要となっています。

弁当代や親睦会費の他にも労働組合費、社宅家賃、団体保険料、旅行積立などは、賃金から控除する場合に労使協定を締結しなくてはなりません。労働者にとってはこれらの金額が知らず知らず天引きされていれば、企業側に不信感を抱く原因にもなります。また制服代やパソコン費用といった、通常は経費と考えられるものが給与から天引きされるのは、事前に説明を受けていたとしても納得しがたいでしょう。

賃金支払いに関してトラブルを避けるためには、企業側が労働基準法の規定を順守したうえで、納得感の高い運用を行う必要があります。労働者個別の事情により貸付金返済を給与天引きで行うような場合でも、同意書を取り交わしておくなど、お互いにやり取りの記録を残しておくことが大切なポイントです。

 

【参照】東京労働局 様式集「賃金控除に関する協定書」

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/standard/relation/20.pdf

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